DVで訴えたい

DVで訴えたい

被害者の安全を確保したうえで、その後の生活を考えた最善の方法をご提案します。

DVの加害者と被害者は、親族関係にあります。そこで暴力などのDVから逃れるためには、いくつかのポイントがあります。まずは、加害者に頼らない生活再建、夫婦関係の清算という2つの作業が必要となります。生活再建や夫婦関係の清算は必ずしも保護命令の申立をしなければできない、というわけではありません。

暴力の危険性の選別

暴力の危険性は、CCV、SCV、SIVの3つに大別されます。これらは、事実の調査のうえ、診断書など客観資料を参照しながら評価していきます。特にCCVのDVの場合はAランクとして、被害者の安全確保を最優先にしながら対処することになる。具体的には、過去に行われたDVについて被害届を出し保護命令を得て再度命令をつなぎます。なお、Cランクの場合は生活支援に重点をおく必要があります。

(1)CCV,Coercive Controlling Violence

CCVの場合のDVは、交際時や婚姻時から継続的な暴力を行っています。そして被害者を脅しコントロールをするために、身体的暴力のみならず、性的暴力、経済的虐待、感情的・心理的虐待等、広範囲の複数の戦略を組み合わせるものとされます。
自分が優位な立場にあることを利用して、支配をエスカレートさせていく場合もあります。精神的虐待の故、心理学的な否認、矮小化をしがちです。
暴力の継続性に着目して、身体的暴力のみならず心理的暴力、性関係の強要、交際や就労を制限して孤立させる旨、複数の戦略を利用して相手方をコントロールしているかどうかに着目することになります。CCVは危険なDVであり、Aランクに該当するといえます。

(2)SCV,Situational Couple Violence

DVの中で、最も多いタイプです。配偶者間が対等な関係にある中で起こるもので、相手方に対する嫌悪感も生理的なものが中心である。
結局、夫婦の口論がエスカレートした結果として暴力に至るのが一般的です。弱い形態の暴力に至るのが一般的です。言葉での攻撃がなされ、配偶者に不貞があり、嫉妬から暴力に至るケースもあります。家庭外では問題がないことが多く、人格的な方よりも少ないとされます。SCVを判別する際には、夫婦間の関係性のほか、身体的暴力の程度、身体的暴力以外の暴力を戦略的に使っているのか、被害者が対等の立場で向き合っているか、被害者の恐怖心の強さが挙げられます。SCVは、Bレベル、高度の危険事案といえます。

(3)SIV,Separation Instigated Violence

SIVは、別離までは問題はないが、不貞や多額の借金等、配偶者間の関係を破綻させるような出来事、別離の際に傷つく際に生じる暴力です。別離後の再発も少ないといえます。SIVの場合は、婚姻中に子の養育上の問題を抱えていることはほとんどありません。
SIVの場合は、別離時の加害者のショックから、一時的に被害者や子が加害者を怖がり、危険という認識を持つことがあります。その結果、短期間であるのはものの、子の監護に関して信頼関係や協力関係を築くことが困難な場合があります。SIVを判別するには、別離の時期までは夫婦の紛争が継続的にあったのか、別離の際に何らかのショックを引き起こすような出来事があったのか、その後の加害者の変化、加害者の暴力の反省などが要素となります。危険事案ですが、裁判所や警察署の関与で相当期間抑制されることが期待されます。

保護命令

被害者が一時的に避難をしても、加害者が被害者の就職先にやってくることがあります。また、サービス業の場合はつきまといや実家などの徘徊を継続することがあります。そこで保護命令という制度があります。
保護命令は、加害者と被害者の間に距離を確保することで、更なる暴力を防止しようというものです。過去に、被害者の身体に向けられた暴力や生命・身体の安全に関わる脅迫が行われ、被害者に傷害を生じた事実があり、現在危険であれば、被害者の事情に照らして、退去命令と接近禁止の一方又は双方を選択することができます。保護命令の効力期間は、退去命令が2カ月、接近禁止が6か月です。いずれの命令も、その効力が切れる時期になっても危険が持続し被害者の安全を確保することが必要の場合は、再度の保護命令の申立をすることになります。

再建計画

安全を確保することができましたら、再建計画のことを考えます。基本的に加害者から離脱をした以上は、加害者の恩恵に依存しない生活を模索していく必要性があります。まずは、婚姻費用分担請求をして、加害者から生活費の一部負担を得られるとしても今後、被害者がいつからどこに生活の本拠を置き、同居のこどもの預け先や就学先をどうするのか、生活費はどこに就職しているかいくら稼ぎ、その不足額をどういう社会制度で得られるのかなどの検討が必要になります。

婚姻費用分担請求

被害者の安全が確保された場合は婚姻費用分担請求をします。しかし、加害者は、「勝手に出て行ったのだから生活費を支払う必要はない」と主張するケースが現在でも多いといえます。悪意の遺棄は、理由のない家出などを指すものですから、DVによって別居を余儀なくされた場合は、悪意の遺棄には該当しません。もっとも、婚姻費用も調停から始まりますが、加害者側はこどもとの面会交流を条件にして、持ち出した資産の返却と交換条件にして遅々として調停が進まない場合があります。

こうした場合は、暫定的な仮払いを求める手続がありますので、その申立をすることによって不合理な交換条件にかからしめることを避けることができます。また、回収に関しては、差押範囲は債務者の手取りの2分の1まで拡大されるなどの改善が実現できています。

DVで訴える際のポイント

弁護士への法律相談では、以下の情報が特に重要です。

  • 加害者との間にどのような事実が存在したか
  • 相談者の身体の安全性の緊急性にかかわる情報
  • 加害者による捜索の状況
  • 安全を確保するアドバイス
  • 被害者の居住状況
  • 証拠としてはどのようなものがあるのか