弁護士コラム

刑事訴訟法

風俗営業適正化法違反被疑事件で準抗告で勾留要件が否定された事案

名古屋地裁平成21年6月24日決定

 

1 本件勾留に係る被疑事実の要旨は、名古屋市内に所在する店舗型性風俗特殊営業店の店長である被疑者が、同店経営者と共謀の上、同店の営業に関し、あらかじめ愛知県公安委員会に所定の届出書を提出しないで、条例で定めた営業禁止地域内である上記店舗の個室内において、同店女性従業員らをして、遊客らの陰茎を手淫等させ、異性の客の性的好奇心に応じて、その客に接触する役務を提供し、もって無届並びに法令に規定された禁止地域内において店舗型性風俗特殊営業を営んだというのである。

 所論は、被疑者に本件の嫌疑がないことや、その他勾留の理由を欠くことを主張している。犯罪の嫌疑がないことを理由として勾留に対する準抗告を申し立てることは許されない(刑事訴訟法429条2項、420条3項)が、この点について、職権で判断する。

 

2 被疑者は、本件風俗店に勤めていたことは認めているものの、同店が無届で営業禁止地域内で営業していることは知らなかった旨供述している。そして、一件記録によれば、被疑者が本件風俗店の従業員であることは認められるものの、店長であった事実は認められず、本件関係者の中で、被疑者に上記無届の点等を告げた者の存在も全く認められない。

 しかも、本件風俗店は、元々、前記所定の届出がなされて、約13年間にわたって営業が続けられており、その届出人が本件の3か月余り前に死亡し、以後無届の状態になっていたというやや特殊な事情が存するところ、被疑者が同店に雇われたのは、本件時の約9日前にすぎず、本件時までに、被疑者が上記死亡等の事情を知り得たことをうかがわせる事情も一切存在しないことなどを考慮すると、被疑者の前記供述は、相当程度に信用性が高いというべきである。

 

3 そうすると、被疑者が故意をもって本件被疑事実を犯したと疑うに足りる相当な理由があるとは到底言い難い。

  したがって、本件は、勾留の要件を欠くものであるから、被疑者を勾留した原裁判は、その余の点を考慮するまでもなく、取消しを免れない。

(裁判長裁判官 芦澤政治 裁判官 寺澤真由美 裁判官 三田健太郎)

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