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安保法訴訟―訴えを却下した東京地裁のセンスを疑う

安全保障関連法の存立基盤事態法につき、国が、存立が脅かされる事態が起こることはあり得ないと主張し、裁判の却下を求めていたことが分かった。立法事実そのものが出鱈目であることを自ら認めるもので、かかる立法を合憲と解していた当事務所の解釈も見直しを余儀なくされることは必至といわざるを得ない。

 

安保法で現職の陸上自衛官が定期していた裁判で、自衛官は、集団的自衛権の行使は違憲であり、存立基盤事態になっても防衛出動の命令に従い義務がないことの確認を求めていた。一種の行政の当事者訴訟と解されるが、あぜんとするのは裁判所が、存立基盤事態など抽象的と断じて一審が訴えを門前払いしたことだ。

 

机上の空論だから訴えの利益がない―だとしたら、机上の空論のために憲法解釈まで変えた安倍政権の暴走が裏から分かることになると云わざるを得ない。

 

常識的な杉原裁判官は著名な行政裁判官だが、命令に従わないと罰則もあるとして、東京地裁判決を破棄し、審理を差し戻した。

 

繰り返す通り、国の訟務検事が主張したのは、存立基盤事態なんて起こらないよ、という主張である。起こらない主張で国民の不安を煽り選挙の争点にも据えていたのかと思うと罪深い。国難突破解散といいつつ、そんなものはないと国が自ら主張したのであり、自己撞着も著しい。

 

これではご都合主義がすぎるとういべきであろう。

 

岡口基一東京高裁判事はツイッターで、このような主張が一蹴されるのは当然だ、とツイートした。まっとうかつ妥当な判断だ。

 

結局、時の政府の恣意行為によって存立基盤事態が認定されることはあってはならない。私たちは、このような主張に鑑み、より存立基盤事態の客観性を担保するアプローチで、立憲主義の見地から、より限定的な事例の集積を図るべきだ。これができなければ、当事務所も存立基盤事態法は違憲であると解釈を変えねばならない。判決を契機に存立基盤事態法の本質の討議を望みたい。

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